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深刻化する人手不足
この章では、人手不足という問題がなぜ中小企業に集中するのか、その原因を解説します。
出生数の減少と働き手不足
世の中には、中小企業よりも優先的に人材を確保できる「職域」がいくつかあります。プロスポーツ選手、医者、弁護士、公務員、大手企業の正社員などがそうです。これらの職域に就職する人々が合わせて100万人いると仮定すると、出生数から100万人を引いた数が「中小企業が雇用できる人材の数」になります。
この視点で各世代の出生数を見ると、中小企業の人材プールが著しく減少していることがよくわかります。
中小企業が雇用できる人材の数
世代の名称 | 年齢 | 出生率 | 100万人を引いた人数 |
---|---|---|---|
団塊世代 | 75歳 | 270万人 | 170万人 |
団塊ジュニア世代 | 50歳 | 210万人 | 110万人 |
ミレニアム世代 | 30歳 | 120万人 | 20万人 |
Z世代 | 18歳 | 109万人 | 9万人 |
新卒者のキャリア選択
実際に、2024年卒の大学生の就職先は、社員1,000人以上の大手企業が50%を超えているのに対し、100人未満の中小企業は、わずか8%でした。この傾向は今後さらに加速すると見られます。働き手が減少するにつれて、中小企業間での人材争奪戦はより激化していくでしょう。
人手不足が招く最大のリスク
人手不足が引き起こす悪循環
人手不足が長引くと、企業にどんな影響を与えるでしょうか?
歯周病を放っておくと全ての歯が危険にさらされるのと同じように、人手不足もまた、組織内の環境を少しずつ悪化させ、新たな退職者を生む負のスパイラルをもたらします。
中核メンバーの流出という危険性
人手不足が招く最大のリスクは、組織の心臓部である「中核メンバーの退職」です。これは、過大なプレッシャーに耐えかねた幹部社員が辞めてしまう状況を指します。中核メンバーを失うことは人材が足りないということ以上に企業にとって深刻な問題になります。
採用に関する3つの誤解
次に、採用活動を行うときによく見られる誤解について、お話しします。
採用活動は、
求人広告を掲載するだけ。
働き手が豊富だったころは、求人広告一つで、多くの応募を集めることができました。
しかし今は、単に広告を出すだけでは、人材を引き寄せることができません。
これは、皆さんが既に実感していることでしょう。
求人広告は、労働条件
(数字)を並べるだけ。
求人広告も時代とともに変化しています。
今の求職者は、求人広告から「自分に適している職場かどうか」を見極めようとします。
給与や休日数などの数字の羅列だけでは、求職者の関心を引くことはできません。
採用のゴールは「入社」だと思っている。
新しいビジネスが次々と生まれる今日、多くの人にとって転職は自然な選択肢になっています。
そのため企業には、人材を採用するだけではなく、社員が長く働ける環境づくりが強く求められています。入社はスタートラインに過ぎず、真のゴールは社員の「定着」にあるのです。
最新の転職市場の動向
この10年の間で転職市場は劇的に変化しました。ここではその状況をお伝えします。
転職層の世代交代
2023年にもっとも多く転職した年齢層は、25〜34歳でした。
彼らは「デジタルネイティブ」と呼ばれ、インターネットを使った情報収集がとても得意です。
経済の低迷期に育った世代でもあり、自己の成長やスキルアップに対する意欲が非常に高いことも特徴です。
求人メディアの新しい潮流
転職ナビやフリーペーパーといった主要メディアに代わり、「求人検索サイト」が転職市場の主導権を握っています。
この変化は、基本的な知識があれば、誰でも無料かほんの少しの費用で情報発信できる環境を生み出しました。
さらに、求人検索サイトには文字数制限がないため、企業による情報発信力の格差は、よりいっそう顕著になりました。
企業ホームページの存在感
企業ホームページの役割も大きく変わっています。
デジタルネイティブと求人検索サイトの台頭で、企業ホームページは企業文化や研修プランなど、企業の特色を示す「ブランディング」の舞台へと進化しています。
求人検索サイトでは得られない深い情報を提供するため、就職活動での貴重なリソースになっています。